大谷翔平選手が、高校1年生のときに書いた一枚のシートがあります。真ん中に書かれていたのは、「ドラ1 8球団」——ドラフトで8つの球団から1位指名を受けること。
このシート自体は有名ですが、改めて見て驚いたのは、その中身でした。
野球の技術と、同じ重さで並んでいるもの
真ん中の目標のまわりには、叶えるために必要な8つの要素が書かれています。
- 体づくり / コントロール / キレ / スピード160km/h / 変化球
- 運 / 人間性 / メンタル
5つは野球の技術や体のこと。でも残りの3つは、運・人間性・メンタル。高校1年の野球少年が、「運」を技術と同じ重さで並べていたのです。
「運」を、毎日の行動に落とし込む
さらに驚くのは、その「運」のまわりに書かれた8つの行動です。
運はふつう「待つもの」「たまたま来るもの」とされます。でも大谷選手は、運を自分でできる行動に変えていました。「ゴミは、人が落とした運。拾うことで、運を拾う」——当時の監督から学んだ考えだそうです。
いまメジャーのグラウンドで大谷選手がゴミを拾う姿が話題になりますが、それは高校1年で書いた一行を、今も続けているということなのかもしれません。
運の研究と、同じことを言っている
運のいい人と悪い人。起きる出来事に大きな差はなく、違うのはチャンスに気づけるかと出来事をどう受け止めるか——という心理学の研究があります。
大谷選手の「運」の8つを見ると、あいさつする人には人が集まり、道具を大切にする人は応援され、本を読む人は見える世界が広がり、プラス思考の人は悪いことの中にも次の一手を見つける。運は、行動の積み重ねの先にある。研究と、一人の野球少年のシートが、同じところに行き着いています。
このシートを生んだ「原田メソッド」
大谷選手のシートは、原田隆史さんの「原田メソッド」の道具のひとつとして知られています。原田さんは大阪の公立中学校の先生で、荒れていた陸上部を7年間で13回、日本一に導いた方だそうです。
才能や運のよしあしではなく、再現できる技術。これは『Sales is 2』の「営業を、勘や根性や偶然ではなく、再現できるものにする」という考え方とも重なります。
目的と、目標は違う
原田メソッドでは、目的と目標をはっきり分けます。
- 目的:なりたい姿、得たいもの
- 目標:目的にたどり着くための、具体的な数字や途中の目印
以前の記事で「目的がはっきりしないと、人は我流になる」と書きました。目的がないまま目標だけを追うと、途中の一歩をゴールだと勘違いしてしまう。原田メソッドは、最初に何のためにやるのかを決めるところから始まります。
さらに、目標を達成する意味を4つの観点で書き出します——自分にとって形のあるもの/形のないもの、人にとって形のあるもの/形のないもの。自分のためだけでなく人のための意味も書く。シートに「応援される人間になる」があるのも、この考え方とつながっています。
毎日、〇と×をつける
原田メソッドにはルーティンチェック表があります。毎日やると決めた行動に、できたら〇、できなかったら×。達成率が86%になると、目標達成がほぼ見えてくるとされています。
そして日誌。その日の予定、うまくいったこと・いかなかったこと、ヒントになった言葉を書き、自分で自分をコーチする。「伸びる練習には、はっきりした目標とフィードバックがある」というエリクソンの研究を、毎日自分で回すための道具です。
自分で考えて、自分で責任を取る
原田メソッドが目指すのは「自立型人間」——自分で考え、行動し、責任を取る人。大谷選手は、運さえ人に任せませんでした。あいさつも、ゴミ拾いも、部屋そうじも、誰かにやってもらうことはできない。自分でやるしかないことばかりです。
これは「うまくいく人に共通する4つのこと」——自分で判断し、主語が自分で、行動する——とも、まっすぐつながります。
あなたの「運」の8つは、何ですか
「あれは特別な人だから」と思うかもしれません。でも、大谷選手の「運」の8つに、特別な才能がいるものは一つもありません。あいさつ、ゴミ拾い、部屋そうじ、道具を大切にする。誰にでもできることを、毎日続けられるかどうか。
もしあなたがシートの真ん中に、叶えたいことを書くとしたら。そのまわりの「運」の8つには、何を書きますか。
※本記事は、公開情報と原田メソッドの考え方を筆者なりにまとめたものです。