前回の記事「出発点を、ゴールに近い点と勘違いしちゃう人たち」で、知り合いに聞いても返ってくるのはその場に合わせた言葉だけで、お客様になる人がどこを見ているのかは分からない、と書きました。

その答えのヒントになるのが、今井晶也さんの『Sales is 2 ファクトファインディング』(扶桑社)です。著者は営業代行の会社で営業研究所の所長を務める人で、累計十万部を超えた『Sales is』の続編にあたります。この本を貫いているのは、営業を勘や根性や偶然ではなく、再現できるものとして扱うという考え方。我流ではなく、型です。

聞くだけでは、足りない

この本では、ヒアリングとファクトファインディングをはっきり分けています。

お客様が話す言葉は、お客様の「思っていること」です。思っていることと事実は、同じとは限りません。だから言葉をそのまま受け取るのではなく、その裏にある事実をつかみにいきます。

問題と、課題は、違う

問題は、放っておくと危険になるよくない現象。課題は、その問題を解決するための前向きな行動です。たとえば「売上が落ちている」は問題で、「どうすれば売上が戻るか」を決めることが課題。問題を聞いただけですぐに商品を勧めても、お客様の心は動きません。

3つのステップと、7つのファクト

① 顧客理解:お客様の事業や状況を知る
② 問題特定:起きている問題の中から、取り組む対象を決める
③ 課題設定:「優先して解決したい」と、重要さと急ぎ具合を認めてもらう

この3つのステップの中で、7つの事実を順番に引き出していきます。

  1. 顧客理解:お客様の事業のしくみ
  2. 現状:今、どこにいるのか
  3. 理想:どこを目指しているのか
  4. 問題:何が起きているのか
  5. 原因:なぜ、それが起きているのか
  6. 示唆:そこから、何が見えてくるのか
  7. 課題:何を、優先して解決するのか

現状と理想を知るから、そのあいだにある問題が見える。原因まで掘り下げるから、本当に取り組むべきことが見える。私は六番目の「示唆」を、売る側から「こういうことも、起きていませんか」と気づきを差し出すところだと受け取りました。お客様が気づいていない課題は、ここで初めて形になるのだと思います。

経験の差を埋める「型」

三百万円のような大きな商品を売るときには、売る人の経験値がそのまま出てきます。経験は一朝一夕には積めません。でも型があれば、何を聞けばいいのか、どこで話を広げてどこで掘り下げればいいのかが分かります。

経験の浅い人にとって、型は経験の差を埋めてくれる道具になります。経験のある人にとっては、自分の勘を人に伝えられる言葉にしてくれる。茶道や武道でいう「守破離」の「守」にあたるものです。

7つのファクトは、自分にも使える

一人で事業をしていると、自分を客観視するのは難しいものです。7つのファクトを、自分の仕事に当てはめてみてください。

「人から見ると、何が見えるのか」は、自分ひとりでは分かりません。だからこそ、その場に合わせた言葉ではなく、事実を返してくれる人や、学びの場が必要です。

Masy'sでは、こうした「自分の事業の現状と理想」の整理や、商談で何を聞くかの準備を、AIを使ってお手伝いしています。頭の中にある考えを言葉にして並べるだけでも、次に取り組むべき課題が見えてきます。

お客様は、自分の本当の課題に気づいていない。そして私たちもまた、自分の本当の課題に気づいていないのかもしれません。あなたが今、いちばん先に解決すべき課題は何でしょうか。

紹介した本:『Sales is 2 ファクトファインディング おもしろいほど成果が出る、究極の「問いの技術」』今井晶也 著(扶桑社、2026年)

(文:佐藤雅代)