「部下のやる気が感じられない」
「何度注意しても、他責思考(人のせい・環境のせい)から抜け出してくれない」
組織を率いる中で、このような悩みを抱えたことはありませんか。
実は、どれだけ優秀な人材を集めた組織であっても、成果にばらつきが出るのは自然なことです。プロ野球のトップ選手を集めたチームでさえ、全員が打率3割5分を打てるわけではありません。
大切なのは、「なぜ全員が完璧に動かないんだ」と力むことではなく、「どうすれば人が本来持っている自発性と当事者意識を引き出せるか」というアプローチに変えることです。
今回は、部下が自ら動き出し、自立したチームをつくるための3つの原則をお伝えします。
1. 問いかけを変える|「詰め」ではなく「質問」で自責化する
他責思考の部下に「自責になれ」「言い訳をするな」と注意しても、相手は防衛本能から心を閉ざしてしまうか、さらに言い訳を探し始めます。
「なぜできないんだ?」と問われれば「なぜなら環境が悪いから」と考えます。でも、質問の角度を変えるだけで、思考は自発的な解決策へと向かい始めます。
思考を切り替える、質問の例
愚痴や、環境のせいにしているとき
目標が高すぎると諦めているとき
「他人は変えられないが、自分の行動は変えられる」という前提に気づいてもらうため、制約をかけた問いを投げること。上司が答えを与えるのではなく、質問によって本人の口から解決策を引き出すことが、自責思考への第一歩です。
2. 究極の心理的安全性|「辞める予定ある?」と聞ける空気をつくる
ブラジルの企業セムコ社の経営者リカルド・セムラーは、徹底的な情報公開と管理の撤廃により、社員の自律性を最大限に引き出しました。その根底にあるのは、「人は本来、自立した大人である」という強い信頼感です。
真の心理的安全性とは、ただ「優しい職場」のことではありません。
そして相手も、素直に本音を話せる。——そういう関係性のことです。
- 「実は2年後に、海外留学を考えています」
- 「将来的に独立したいと考えています」
このような本音が言えるのは、会社や上司が「自分の人生を応援してくれるパートナー」だと心から信頼しているからです。
「会社に縛り付ける」のをやめ、お互いにオープンな対話ができる環境をつくる。すると、引き留めのための不毛な探り合いがなくなり、「今この瞬間に、どれだけ全力を尽くせるか」という最高の状態が生まれます。
3. 成長を可視化する|「スキルラダー」を設計する
自発的な行動を引き出すには、精神論だけでなく「具体的な成長の階段(スキルラダー)」という仕組みが必要です。
教習所のカリキュラムのように、「何を学べば(インプット)」「何ができるようになれば(アウトプット)」次のステップに進めるのかを、客観的な基準として示します。
ラダーをつくる3つのポイント
- 客観的な合格条件をつくる 「やる気がある」といった曖昧な評価ではなく、「商品テスト90点以上」「先輩3人とのロープレ合格」「3ヶ月連続で目標達成」など、誰が見ても○×がつく条件にする
- 学習・支援プログラムを用意する 「次はL2を目指してね」と言うだけでなく、「L2に上がるための動画教材・トレーニング」をセットで提供する
- 評価や報酬と連動させる 自分のスキルが上がることが、評価や報酬にどう跳ね返るかを明確にする
「次に何をクリアすればいいか」がはっきりすれば、部下は上司から指示されなくても、自ら次の階段を登り始めます。
人が採れない時代だからこそ、効いてきます
ここからは、私たちがふだんご相談を受けている立場から、少し付け加えます。
いま、多くの会社が人を採れずに困っています。だからこそ、いま在籍している人が伸びる仕組みの価値が、以前より大きくなっています。採用でこぼれた分を、育成で埋めるしかないからです。
そして3つ目の「スキルラダー」は、実は属人化の解消にも直結します。「何ができれば一人前か」を言葉にする作業は、ベテランの判断を会社に残す作業と、ほとんど同じものだからです。
教材づくりや、合格条件の文章化、研修動画の準備——このあたりは手間がかかりますが、AIが得意とするところでもあります。ベテランの頭の中にあるものを引き出して、形にしていく。そこは機械に任せて、人は「問いかける」ことに時間を使う。今回の3原則と、相性のよい分担だと思っています。
おわりに
組織の中に、成果が出る人・出ない人がいるのは、ごく自然なことです。だからこそ、「できない人」としてレッテルを貼るのではなく、全員に成長の可能性がある前提に立つことが、スタートラインになります。
二、オープンな対話で、一人の大人として信頼し合う
三、成長の階段を見せ、自発的な挑戦を促す
「管理するマネジメント」から、「自発性を引き出すアプローチ」へ。
今日投げる、たった一つの質問から、チームの空気は変わり始めます。